本研究は、超高齢社会における認知症の早期発見と介入を目指したアプローチの開発を目的としています。認知症の早期発見と対応は、関係者の生活の質を向上させるために重要です。
認知機能の低下を早期に検知するために「N-back課題」をモチーフとしたゲームを制作し、楽しみながら認知機能の評価を行えるアプリを開発します。N-back課題は、前頭前皮質の脳機能を調べる方法であり、軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー型認知症の診断に有効とされています。
ゲームという表現形式によって、検査に付随するプレッシャーや義務感を低減し、ポジティブな感情を引き出しながら取り組めるように設計されています。また、ルールの理解しやすさや、デジタルデバイスを使用する習慣を持たない人にとっても遊びやすくなるよう、チュートリアルやモチーフにおいて工夫がなされています。アプリの有効性については、既存の認知症スクリーニング検査と比較することで、医学的根拠を確立します。
地域中核病院や自治体と連携し、アプリの実用化に向けた実証も行います。本研究により、認知症の早期発見が日常生活の中で可能となり、家族や地域コミュニティと連携した新たな健康促進モデルの構築が期待されます。
- 桐山孝司
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東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻教授。東京大学大学院工学系研究科修了、工学博士(1991)。
東京大学人工物工学研究センター、スタンフォード大学設計研究センターなどを経て現職。2016年より大学院映像研究科長。工学設計の知能化を出発点として、知識情報処理、インタラクティブメディア、映像メディア学などの分野で研究を行ってきた。
EUCLID(佐藤雅彦+桐山孝司)として「計算の庭」(2007)、「指紋の池」(2010)、「統治の丘」(2015)などの作品を発表している。
- 薄羽涼彌
- 映像メディアを通して、人間の知覚やコミュニケーションのあり方を再認識する作品制作を行う。映像作品は国内外の国際アニメーション映画祭での上映や、デザイン教育テレビ番組で放映。携わったゲーム作品はNTTインターコミュニケーションセンターでの展示や、「神ゲー創造主エボリューション2023」(NHKエンタープライズ)でグランプリを受賞。東京藝術大学芸術情報センター特任助教。