音楽土木工学

開発中のソフトウェア"otopoiesis"のスクリーンショット。左上には音声波形が、その下には7つのパラメーターを調整するスライダーが並んでいる。右側にはこのプロジェクトファイルをテキスト形式で表示した画面が表示されている。
開発中のソフトウェア”otopoiesis”のスクリーンショット。

音楽土木工学とは、音楽のために作られた訳ではないが、しかし音楽に大きく影響を及ぼす基幹的な技術やインフラストラクチャを、批評的かつ実践的に作り直す仮想的な学問領域です。また、その土木工学に対応する英語、Civil Engineering(市民工学)という語からも、ボトムアップにインフラを構築するというインスピレーションを得ています。

具体的には、コンピューター上で音楽を記述、伝達する方法の一つとして、音楽のためのプログラミング言語”mimium”の開発に取り組んでいます。mimiumでは、十二音やグリッド的リズムといった特定の音楽様式を前提とするのではなく、汎用プログラミング言語の上に最低限の音楽を扱うための機能を提供することで、汎用性と拡張性を維持することを目指しています。また、mimiumをベースにした、グラフィカルに、かつプログラマブルに扱える音楽制作ソフトウェア”otopoiesis”の制作にも取り組んでいます。

また、音楽に用いられるコンピューターという装置の物理的な基底である、電子回路やトランジスタといったものも研究の対象です。音を出す装置の電子基板自体をデザインしたり、自力でトランジスタを作る行為を通じて、”デジタル音楽”という実践の境界を再定義することを試みています。

松浦知也
SoundMaker
音に関わるメディア・インフラストラクチャ技術を実践を交え批評的にデザインする活動を「音楽土木工学」と称して研究。ハウリングだけで音を出す自作電子楽器「Exidiophone」などを用いての演奏活動、音楽プログラミング言語「mimium」の設計と開発のほか、近年はDIY半導体の制作に取り組む。分担執筆に「クリティカル・ワード ポピュラー音楽」(2022年、フィルムアート社)。1994年生まれ。2022年九州大学 大学院芸術工学府 博士後期課程修了。同年より東京藝術大学 芸術情報センター 特任助教。

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