
東京藝大アートDXプロジェクトでは「ART DX EXPO #2」芸術未来研究場 アートDXプロジェクト / I LOVE YOUプロジェクト2024 成果発表展を開催しました。
東京藝大アートDXプロジェクトは、デジタル技術やICT技術を使って、芸術の価値、ひいてはアートの社会的価値を最大化し、より良い社会構築を目指すプロジェクトです。本学におけるデジタル技術と表現に関わる研究・教育を推進し、発信することで、技術と社会の向かうべき最先端(State-of-the-ART)を探究しています。
今回の「ART DX EXPO#2」ではその発表を行うとともに、学生・教員の創作活動を支援する東京藝術大学「I LOVE YOU プロジェクト」として公募され、デジタル技術を用いる研究・制作活動としてアートDX領域に採択された13のプロジェクト成果を紹介します。
また、トークイベントやワークショップを通じて、アート×デジタルに関する興味深いテーマを実践的に掘り下げました。
◤ 開催概要 ◢
日程:2025年3月20日(木)ー23日(日) 11:00ー18:00 ※最終日のみ17:00終了
会場:東京藝術大学 上野キャンパス 音楽校舎
本部棟 1F、大学会館 2F展示室、アーツ&サイエンスラボ 1Fギャラリー・4Fホール
※関連イベントは藝大部屋でも開催
入場料:無料(予約不要)
ART DX EXPO #2 特設ウェブサイト:https://artdx.geidai.ac.jp/exhibition/02
東京藝大アートDXプロジェクト 公式ウェブサイト:https://artdx.geidai.ac.jp
主催:東京藝術大学 アートDXプロジェクト
関連展示:東京藝術大学 映像研究科ゲームコース展 06 (美術校舎 総合工房棟内)
◤ 出展作品 ◢
A会場:本部棟 1F

亀川研究室+音響研究室3Dオーディオラボ「Geidai 3D Audio Lab / ResonoRemake -Sogakudo-」*
音響研究室と音楽環境創造科でおこなっている立体音響の配信の取り組みの紹介と、建築科との共同でおこなったバーチャル奏楽堂内でオーケストラの演奏を体験できるResonoRemake -Sogakudo- を出展しました。

土田恭平「Knitting socks on a 3D printed sock knitting machine」
3Dプリンターで靴下編み機をリデザインすることで「ものをつくる」という、かつて多くの人の日常において当たり前だった行為を、つくり手や使い手、環境、素材、持続性など、さまざまな視点・立場から見直してみたいと思います。

戸石あき「表現力豊かな《工房》の模型」
ものを創造するための空間──工房のなかで交わされる人と道具との親密で、真摯な対話を3Dスキャン・モーションキャプチャといった技術を使用してアーカイブし、この空間と人やものの動きを含めたメディアとして “表現力豊かな《工房》の模型” を制作しています。

西尾康之「動体塑像の可能性」
彫刻などの立体造形物をスキャンしてアバターに加工した物を作者が着用することで、様々な美術的フィードバックが得られるのではないかという試みです。主にそのアバター達を紹介する生配信と実際に作者がアバターを着用している場面の録画映像によって構成されています。
B会場:大学会館 2F展示室

環境設計第二研究室(宮本凱土+ヨコミゾマコト+出井夕香子+棚田悠介+平野紗菜+渡邊晴哉)「デザインサーベイ3.0 -3Dスキャニングによる《場》の空間記述-」
本企画では、デザインサーベイの延長線上にレーザー3Dスキャナー等を用いた3Dデータの採取を位置付けています。調査対象として「雰囲気を伴う《場》」に着目し、その空間記述を試行しています。①記録作業の効率化、②3DCADを用いた設計環境へのスムーズな移行、③3DプリンターやVRを用いたアウトプット、④3DデータやVRを中心とした地域づくりのためのコミュニケーションツール、をめざしデザインサーベイの新たな展開と設計手法の拡張可能性を探ります。

澤田澄+坂根大悟「水の低きに就くが如し」
古典文学『源氏物語』に登場する玉鬘をテーマに、「妄執の多面性」に着目した空間インスタレーションです。パラメトリックスピーカーの振動により水面に波紋を発生させ、その波紋に照明を当てることで、天井に反射する模様を作り出し、能面と水面を通じて妄執の可視化を試みました。

堀田光彦「fluid casting -流体の鋳造- 風を鋳込む」
目には見えない風をコンピューター上でシミュレーションすることによって 視覚化し、鋳造することで風が流れているその瞬間を留め芸術作品として成立 させるとともに鋳造表現の幅を広げ拡張します。

湯澤大樹「伝統の繋ぎ方 – 伝統技法ワークショップと文化財 DX 事例を通じて –」
建築分野ではDX 化が進み、3Dスキャンによるデジタルアーカイブが行われ復元や保全に役立っています。デジタルアーカイブ資料は、修復や改修に必要な図面や資料製作に役立つだけでなく、取得した点群データから構造そのものや歪みを確認することを可能とします。 本プロジェクトは、3Dスキャンによる伝統建築DX・宮大工による伝統技法・地場産材を使用したワークショップの3点を軸に、伝統・新旧の技術を認知・体験し継承に繋げる内容です。
C会場:アーツ&サイエンスラボ 1Fギャラリー

岡千穂「リミナル空域探知機」
リアルタイムに地球上を移動する飛行機、特に深夜0時付近に活動する航空機をトラッキングし続けるデバイスをつくっています。特定の方向の空にかざすと、低解像度のディスプレイ上に飛行機の位置や今・こことの距離が示されるという、低電力でDIYなARデバイスです。データは、作家自身の家庭に構築されたソーラー電力駆動サーバーから配信されます。

東京藝術大学 アートDX+NTT人間情報研究所 「リアル世界と融合した動的な点群空間に向けた研究」*
レーザースキャナーで取得されるデータは、位置情報と色情報を持つ無数の点の集まりである点群データとして扱われます。 本研究では点群データをデジタル空間内で動かすことで動的な表現を試みるとともに、リアル世界との融合を図ることで、動的な点群空間の体験の可能性を模索します。
東京藝術大学アートDX:秋田亮平+浜田卓之
NTT人間情報研究所:千明裕+望月崇由

八谷和彦+天文仮想研究所(VSP)+ JAXA 「はやぶさ2タッチダウンチャレンジ」*
JAXA相模原キャンパス交流棟に設置してある「はやぶさ2タッチダウンチャレンジ」の開発用のミニバージョンを、今回特別に都内で公開しました。
C会場:アーツ&サイエンスラボ 4Fホール

B-FAX (三浦星イレナ)「アンセム・ネオ」
千葉県館山市を舞台に展開されるロボット演劇。「東京ビエンナーレ2025プレアクション」の一環としてJR上野駅正面玄関口にて実施された「博士のためのアンセム」をブラッシュアップし、球体スクリーンへの映像表現と合わせて上演されました。

Yasmin Vega「Melodic Pigments: Exploring New Synesthesia」
音と色の関係、そして共感覚: 色調(音を聞くと反射的に色を想起する現象)をテーマに制作された、電子音楽とライブコーディング、流動的なビジュアルを融合したパフォーマンス作品。演奏される音楽は、私(作者)が音楽に対して抱く色のイメージを学習したAIに入力され、AIが算出した色がパフォーマンス中に映像やLEDにリアルタイムで反映されます。
※芸術未来研究場 アートDXプロジェクト / I LOVE YOUプロジェクト2024 採択者10組+特別研究枠3組(*)
◤ 関連イベント ◢

①ワークショップ「芸術情報土木工学特別演習:トランジスタを作ってみよう」
概要文:芸術情報土木工学とはテクノロジーをアートに応用するのではなく、日常的に表現に使っている技術インフラを見直す学問です。本WSでは、オープンソース半導体制作コミュニティISHI会協力のもと、コンピューターの物理的基礎であるトランジスタの自作を試みます。
ファシリテーター:松浦知也(芸術情報センター)
講師:貞方敦雄(九州産業大学)
共同企画:ISHI会
日時:3月23日(日) ①13:00〜14:00 / ②15:00〜16:00
会場:藝大部屋(東京藝術大学 芸術未来研究場)(校舎外)

②トークイベント「アニメーションとAI」
概要文:アニメーションの制作工程において、AIの活用は、作画や着彩などの効率化を上げる手段として大きく期待されています。本学大学院映像研究科修士1年の作品を事例にアニメーションのAI活用の事例と課題を考察します。
登壇者:松田華凌(東京藝術大学大学院映像研究科修士1年)、新井モノ (AiHUB株式会社 CTO)
日時:3月23日(日) 13:00-14:30
会場:国際交流棟 2F GEIDAI LIVING(音楽校舎)

③トークイベント「ジェレミー・コーティアルさんの世界」
アナログなドローイングとデジタルな世界をつなぐ《PaperTronics》シリーズを作られているジェレミー・コーティアルさんをお招きして、彼の作品を紹介します。
登壇者:ジェレミー・コーティアル
聞き手:八谷和彦(本学教員)、徳山由香(キュレーター)
日時:3月23日(日) 15:00-16:30
会場:国際交流棟 2F GEIDAI LIVING(音楽校舎)
すべて参加費無料
◤ 資料◢


◤ お問い合わせ◢
東京藝術大学アートDXプロジェクト 事務局
info_dt@ml.geidai.ac.jp
◤ クレジット◢
[運営] 東京藝術大学アートDXプロジェクト 事務局(岡本美津子/八谷和彦/桐山孝司/秋田亮平/薄羽涼彌/松浦知也/村上愛佳)岡千穂
[グラフィックデザイン] 根津小春/STUDIO PT.
[デザインシステム・ウェブサイト] HAUS
[撮影] 縣健司